2008/01/22

携帯サイトフィルタリングの危険性

本当はDRMと私的録音録画補償金制度について書こうと思ってたのだが
考えようによってはこっちのほうがよっぽど重要な問題なので先に書く。


昨年末あたりから総務省が携帯キャリア各社に対して
未成年者に対する有害サイト(ポルノや出会い系・自殺サイト等)へアクセスできないよう
フィルタリングするよう要請が出されていたのは周知の通り。

それに対して案の定キャリア・コンテンツ事業者から不満がでた。
もちろん一ユーザとして(未成年ではないが)俺もこの総務省の要請には反対だ。

勿論未成年者がポルノサイト等法律上禁止されているサイトへアクセスすること自体はいけないことだが、
それをフィルタリングという手法で実現するのはあまりに危険だ。

何故か。


ある特定の人達をある特定のサイトにアクセスさせたくない場合、
通常以下の2つの手法が考えられる。

1.本人自身に認証を求める
2.フィルタリングにより自動的に情報を排除する(第三者が発行する公的電子証明書による自動認証も含める)

ややわかりにくい書き方になってしまったが、特徴として
1.は本人に規制されていることが「わかる」
2.は本人に規制されていることが「わからない」
ということがある。

単純に技術的見地からすれば、規制する方法としては2.の方がスマートだ。
規制のために手を入れる範囲が極小化できるし、コントロールしやすい。
ユーザにたいしても求める操作が少なくて済む。
実際企業等では業務中に業務対象外のコンテンツにアクセスできないよう
この方法でアクセス規制しているところが多い。

しかしこれらの長所はそのまま諸刃の剣となる。

ユーザ自身には規制されている事自体がわからないため、
「そうした情報そのものが存在すること」自体がわからなくなってしまう。
これは中国においてgoogleで「天安門事件」等中国共産党にとって
都合の悪い情報がフィルタされている例にもある通り、現実に行われている行為だ。

要するに検閲に繋がる可能性があるのだ。

これは↑リンク先の記事中でも指摘されているし、
L.レッシグ教授によってもその危険性に言及されている。
(コンテンツ業界萎縮の可能性については上記記事中で十分述べられているので
 ここではあえて触れないでおく)


たしかにポルノ等違法サイトへのアクセスは禁止しなければならないが、
それはあくまで社会的規範にのっとって成年が未成年者に教えるべきだ。

そしてそれは親なり周囲の人なり学校なりで教えるべきことだ。

その上で、技術的にはスマートではないかもしれないが、
1.の方法で規制することによってあくまで自分のしていることが「悪いこと」だと
わかるようにしていくべきだろう。


と、した上でこれは俺の個人的な意見だけど、
ポルノはともかく出会い系サイトや自殺サイトなんてのは
別に規制しなくてもいいんじゃないかと思うけどね。

確かに犯罪の温床になっていることも否定はできないけど、
それを上回る魅力と効果(本当にフレンドリーな出会いや自殺したいほど悩む人達の相談等)
もあるはずでしょう?

そういうところにアクセスしたくような悩みを抱えているようなら
周囲の人間が気づいて相談にのってあげるべきでしょう?

それらを一切無視して一律「ダメ!」としてしまうのはいかがなものでしょうねぇ。
色々悩んで考え抜いた挙句自殺を決意するなら、それはそれでその人のとった選択として尊重すべきだと思うし。
自分の思うようにいかないことが多いこの世の中で、
せめて自分の命の使い道くらいは自分の好きなようにさせてやっていいじゃない。


念のため言っておくと、別に自殺を助長する訳じゃありませんよ。
ただそういう言わば道徳的教育指導を怠って単純に技術的問題として解決しようとすることは
ゆくゆくは自分達の思想的自由をも侵される危険があるよ、と言っておきたいだけだ。


そんだけー。

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