2008/01/18

Appleのスゴさ

今のAppleはスゴい。

転びMacerが何を今更・・・と思われるかもしれないが、まぁ聞いて欲しい。

別にMacBookAirを発表したり、iTunes Movie Rentalsを開始したから、という訳ではない。
それらのアウトプットを生み出す根源的な強さが今のAppleにあるからだ。

その強さとは2つ。

1.ユーザが"本当にやりたいこと"を理解してモノを創っていること
2.ユーザの"新しくやりたいこと"を刺激して引き出すこと

以下順を追って説明しよう。


1.ユーザが"本当にやりたいこと"を理解してモノを創っていること

一見当たり前のようだが、きちんと実現されている例は往々にして少ない。
これはそのほんの一例。

先のMacWorld Expoで行われたスティーブ・ジョブス氏のキーノート・スピーチ
MacBook上のQuickTimeで見ていた時のこと。

スピーチは約1時間半に渡るもので大変面白く見せてもらったが、
この1時間半の動画の再生中、一度も画面が暗くなったり消えたりすることがなかった。

長年のMacユーザの方にはごく当たり前のことかもしれないが、
Windows環境でWindows Media Playerを使ってたりするとこうは簡単にはいかない。
大体途中でスクリーンセイバーが起動したり、ノートPCだと画面の電源が切れたりする。
勿論設定を変更すればそうならないようにすることもできるが、そんなのいちいち面倒でしょ?。
おまけにWindowsVistaなら下手すると「あなたが開始した操作であるなら"継続"ボタンをクリックして下さい」
とか「たった今俺がこの場でやっただろ!!」と怒鳴りたくなるメッセージが出てくる始末。
(いや、プログラマの立場から見ればそうせざるを得ない事情もわからなくはないけど、
 だからといって・・・ねぇ、これはないでしょ、いくらなんでも)

一方、MacBookだって通常何もしなければ1分くらいでバックライトが暗くなるし、
2~3分もすれば待機モードに入る。
しかし動画再生中はそれがない。

それは、ユーザのしたいことがあくまで「動画を観る」ことであり、
それを実現するためにはシステム(コンピュータ)はどうあるべきか、を十分に理解しているからだ。

一言で言えば、「使い勝手が良い」ということに尽きる。
そしてこれはiTunesやiPod等、近年のAppleのプロダクト全般に言えることだ。


2.ユーザの"新しくやりたいこと"を刺激して引き出すこと

例えばiPhone。

スリムで洗練されたデザインと適正な価格に革新的なユーザインタフェース。
機能がどうこうという前に、思わず「触りたい」「使いたい」という気持ちにさせられる。
そういうユーザの意欲(≒購買意欲)のそそりかたが非常に上手い。

また、現行のMacBookは非常にエレガントなデザインだ。
それでいて一昔前に強かった「壊れやすく不安定」というイメージは殆ど薄れ、
ハード的にもソフト的にも非常に安定していて使いやすい。
工業プロダクトとしてきちんと一定水準を、それもかなり高いレベルで保っている。

ソフトウェアでみても、DockのGUIは単純に見た目に楽しめるし、使いやすい。
Keynoteの表現力の高さはPowerPointのプレゼンを10年遅れに見せてしまう。
UNIXベースのOS-Xは堅牢で使いやすく、信頼性に富む。

お陰でMacBookを衝動買いしてしまった人間も少なくないだろう。
かくいう私もその1人。

そしてiPod+iTunes。

音楽が大好きでよく聴く私だが、実は一時通勤電車等で音楽を聴かなかった時期がある。
MDはメディアがかさばるし、メモリ型のプレイヤーはまだ容量不足だったり
規格がバラバラだったりして、「ポータブルで音楽を聴く」という環境の利便性が低かったからだ。

そんな時、iPodが現れた。
当初はMacでしか使えなかったが、しばらくしてWindowsでも使えるようになった。
そして店頭で使ってみて、そのあまりの使いやすさ、容量の大きさに即買いした。
ただその当時はまだiTunesがWindowsに対応しておらず、Windowsでは別のMP3エンコードソフトを使用していた。

その当時はそれしか選択肢がないので気にならなかったが、
やがてiTunesがWindows対応になると、これまたその使いやすさにビックリ。
何しろiEEE1394(当時はまだUSB2.0未対応)でiPodを繋ぐと即同期が始まる。
以前のソフトならいちいち同期ボタンを押さなきゃならなかったところだ。
これにはちょっと感動しましたね。

これはどちらかというとデザイン寄りの話になるかもしれないが、
一言で言うと「洗練されている」ということになろうか。
ただし見た目だけでなく、ソフトという内面も含めての話。
設計とその思想も含めて実にエレガントだ。



とまあ転びMacerからみたAppleの魅力をまとめてみた。

さて、こうしてAppleの魅力を並べてみると、ついMicrosoft/Windowsと比較してしまう。

たしかに両者を単純に比べるのはちょっと可哀想だ。
方やハードを売るApple、方やソフトを売るMicrosoft。
方やMacというハードに特化できるOS-X、方やPC/AT互換機というオープンアーキテクトに対応しなければならないWindows。
使われる場面も使われ方も異なるものだから、単純な比較はナンセンスだろう。

しかし、先にあげたAppleの2つの魅力と強さは、
モノをつくる者としては是非持ち合わせたい、いや、持っていなくてはならないものだ。
そしてこれらは今のMicrosoftに決定的に欠けていると思われる。

これはMSに限らず、特に日本のIT/SIベンダーで顕著だが、「お客様は神様です」という言葉を履き違え、
顧客の言う通りにモノやシステムを作ることが顧客満足を高めると勘違いしている人間が多い。

そうではなく、ユーザが言葉で言う事の裏にある、「本当にしたいこと」を探り当て、
「本当はこうしたいんでしょ?」ということを提案し、実現することが
モノをつくる人間に求められる力ではないかと思う。

とまぁまた大言壮語してしまったが、自戒の意味も込めてここに書きとめておく。
自分自身、まだそんなにデキる人間じゃないからね。


でもまぁ、そんなことをサラッとやってのける今のAppleは、
本当にスゴいと思うわけです。


今後、特にパーソナルベースではWindowsからMacへの買い替えが進むんじゃないかと予想する。
実際、パソコンとかよくわからない人にはWindowsよりMacの方がはるかに使いやすい。

しかしビジネスシーンではそう簡単にはいかないだろう。
莫大な量のドキュメント資源はそう簡単に移行できないだろうから。
(それでもKeyNoteのプレゼンを見ると、もうパワポでやるのが馬鹿らしくなるけど)

それに全てのコンピュータがMacにせよWindowsにせよLinuxにせよ
単一プラットフォームになってしまうのも非常に危険だ。

当面、事務系はWindows、出版・アート系及びホームユースはMac、サーバサイドはLinuxというように棲み分け、
オフィススイート等のデスクトップアプリケーションをOpenDocs等ブラウザベースのものに移行して
相互の幸福な緊張関係を維持しつつ、互いに切磋琢磨していくのが
最終的にユーザにとって最も便益があるのではないか、と思う。

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